ひゅうがプロダクションの日常

プロデューサー兼コスプレイヤー・日向 舞。歌い手ユニット「きさいツインズ」。アイドルグループ「フルート・ピッコロ4人姉妹」。彼女達の日常をこっそり覗いてみませんか?

自閉症当事者が語る!診断がついた経緯と私の特性

昨日は自閉症啓発デーだったみたいですね。

今朝新聞を読んで知りました。

私は、20歳になってから自閉症の診断がついたいわゆる「大人の発達障がい」の当事者です。

そもそも自閉症とは?という話は、長くなるので今回は割愛します。(これを割愛してもかなり長い話になりますが。)

わからない方は検索してみてください。色々情報が出てくることと思います。

但しご注意発達障がいは病気ではありません。周りの理解次第で「個性」にもなり、「障がい」にもなりうるものです。私の場合は、勤めていた幼稚園がたまたま「周囲の理解がなく、『障がい』となる」ことで、「発達障がい」に気づくことができた、と言う次第です。

 

まず、検査をすることになった経緯をお話していこうと思います。

私は、保育科の短大を卒業すると、新卒で幼稚園教諭をしていました。

それが2017年のことです。当時20歳。

自分なりに一生懸命にやってきたつもりでしたが、それでも、

・製作物が期限に間に合わない

・先輩に何度注意されても、改善できない(自分はそのつもりはない)

・先輩がなにかフォローをしてくれていても、それに気づかない

など、様々な弊害が出ていました。

(遅刻はほとんどなく、挨拶や返事は主任の先生に褒められたこともあるので、そこはきちんとできているという自負があります。)

この業界、特に私が勤めていた園では、「即戦力」になる人が求められます。しかし、私はそれに応えることができませんでした。

このような要因が重なり、2017年11月に園長から、「今年度いっぱいでおいとましてもらいたい」と、暗に退職を言い渡されました。

私の勤めていた園は各学年2クラスでしたので、同じ学年の先生同士は「ペア」と言うことが多かったです。その「ペア」だった先輩の先生(私よりも6歳年上で、当時教諭5年目、今回はN先生としましょう。)は、第1印象からも気の強そうな先生だったのですが、結構感情的にものを言う人で、子どもに対しても「いい加減にしなさい!」と怒鳴るなど、「そんな言い方する!?」って思ってしまうほどでした。(私も今の職場でたまにやってしまいます。反省。)

もちろん、幼稚園と言うのは「教育」の場なので、「やるべき時にはやる」と言うことも教えなければなりませんし、時には厳しいことを言わないといけない時があるのも事実です。しかし、私が見た限りだと、それを逸脱しているな、と思ってしまうこともありました。

今思えば、根本から相性が良くなかったのだと思います。私に対しては「怒鳴る」とまでは行かなくとも、かなりきつい口調で叱責されることもたくさんありました。

そして、私のその「出来ていない部分」を、園長を含め色んな先生に報告して回っていました。

もちろん、私にも「上司から言われたことができていない」などの要因はあったので、N先生も私の指導の仕方で悩んでいたそうです。私もそれは薄々感じていました。

 自分が発達障がいだと疑い始めたのは、叱責されることが増えた、2学期に入った頃です。

その頃から発達障がいについて調べ始め、その際に「カサンドラ症候群」という言葉を見つけます。(わからない人はグーグル先生に聞いてみよう!)

どんどん調べているうちに私は思いました。

「このままでは、私のせいでN先生がカサンドラ症候群になってしまうかもしれない。そうなる前に、自分にもし何かあるのであればはっきりさせたい。」と。

それが、検査を受けるきっかけでした。

決意したのがちょうど出身大学の文化祭前だったということもあり、文化祭で大学に遊びに行った際に発達障がいを専門で研究している先生に、発達障がいに詳しい医師を紹介してもらいました。

本来ならば成人の初診は1年待ちのところを、大学の先生の計らいで、特別枠で1月に診察をしていただきました。

1月の2回の診察で、現在の困り感のことや、今までの生い立ち、2回目は母にも同席してもらって小さい頃の話などを聞いていただき、そこから得た情報と、大学の先生にあらかじめ伝えていた情報を総合すると、「何かしらの診断名がつく可能性が非常に高い」「どちらかというと自閉症スペクトラムの傾向」という見解が出ました。

私はすぐに職場の先生たちに報告し、サポートしてほしい点を紙にまとめて全員に配りました。

この頃には退職も決まっており、他の先生にも「何を言ってもダメだ」と呆れられていた時期でしたが、ここで先生たちの態度が変わりました。

N先生も、「日向先生(本名ではないですが便宜上私のことをこう書きます。)がそんな状態だったって知らずに、どんどん言い方もきつくなって…。それはすごく反省してます。」と言ってくださいました。

この言葉で、それまであったN先生とのわだかまりが少しだけ解けたような気がしました。

主任の男の先生も「みんな協力したってな」と全体に声をかけて下さいましたが、ここで私は感じました。「ああ、ここは『発達障がい』とカミングアウトしないと受け入れてくれないんだ、その程度の場所なんだ。」と。

それに気づいたとき、私の中で園に対する未練がスッと消えました。

そして、「次は、障がいを持つ子どもたちを支援する場で働いてみたい。発達障がいの診断がついた私なら、多少たりとも子どもたちの気持ちが理解できるかもしれないから。」と思ったのもこの頃です。

2018年5月に今の職場に転職し、2020年4月現在まで2年ほど勤続しています。

今の職場は、「ここは様々な障がいを持っている子どもたちを受け入れる場。だから、スタッフも障がいの有無関係なく一緒に働きましょう。」というのが社長の方針です。

事業の性質上のものもありますが、スタッフさんも理解ある方ばかりで、私にとってはとても働きやすい職場です。

ここからは、自閉症当事者の私の、特性についてお話していこうと思います。

 あくまで「私の場合は」になりますが、一つの例としてお読みください。

現在は自閉症の定義が変わり、以前は区別されていた「アスペルガー症候群」や「高機能自閉症」も含めてすべて「自閉症スペクトラム障がい」という名前になっていますが、ここでは皆さんにわかりやすいよう、以前の区分でお話していこうと思います。

私は、「自閉症スペクトラム障がい」の中で、あえて以前の区分で区別するなら「高機能自閉症」にあたります。

高機能自閉症」は、皆さんもなんとなく聞いたことがあるだろう、「アスペルガー症候群」とよく似ています。

両者の違いは、

「小さいころ、言葉の発達が遅れていたタイプが『高機能自閉症』」

「小さいころの言葉の発達が遅れなかったタイプが『アスペルガー症候群』」

ということのみです。

どちらも、知的レベルには何の問題もないことが多いため、大人になってから診断がつくケースも多いようです。

 

特性としてはあくまで「私の場合は」ですが、

 ・空気が読めないところがある

空気が読めないとよく言いますが、どちらかと言うと「空気がわからない」です。

私としてはむしろ「空気を読むって何!?」という感じです。

 

・相手の気持ちを察することが苦手

簡単に言えば「デリカシーがない」ということです。

最近は社会経験も積んである程度分かるようになってきましたが、同世代の健常の方に比べるとまだまだ未熟なのが現状です。

悪気はないのですが知らない間に失礼なことをしていたり、言ってはいけないことを言ってしまったりすることがあります。

なぜそうなってしまうのか…これは私なりの分析であくまで私の場合は、ですが

「口頭で話す」と言うのは常に「アドリブ」です。

書く文章のように頭の中や下書きで文章を組み立て、推敲している余裕はありません。

それが理由の一つではないかと思います。

(但し、書く文章でも自分が「書いたら失礼になる」と思っていないことだと、相手を誤解させるようなことを書いてしまうこともあります。しかし、口頭よりも書面の方が、文章を推敲する余裕がある分、失礼なことを書く確率は下がると思っています。)

 

 ・同時に複数のことをすること(いわゆるマルチタスク)が苦手

 要するに、「ながら作業」が苦手、ということです。

私は作業をするとき雑音が気になるタイプのため、YouTubeの音声を流しながら作業をすることが多いですが、基本的には遮音が目的であり、作業がはかどってくると音声は聞こえなくなります。

「いつの間にかこんなに動画が進んでいた」なんてこともざらです。

また、「話を聞きながらメモを取る」ということも、「ながら作業」に入るため、自閉症の人は電話対応が苦手と言われているようです。私も電話対応は嫌いです。

あくまで私の場合は、ですが、私は相手の話を聞くとき、相手が言ったことを頭の中で文章に変換して理解しています。

例えるなら、「話を聞いて、それをリアルタイムでタイピングしている感じ」です。頭の中でそんなことをしながら、さらに実際に手を動かしてメモを取るなんて非常に難しい作業です。

むしろ、健常の方が相手の話を聞くときにどんな思考回路で聞いているのかが知りたいです。

そのため、私は耳で聞くよりも、書面で文字として書いてあった方がより早く理解できます。

元々小さいころから活字が好き*1なので、それもあると思いますが。

そもそも、自閉症の人は全体的に視覚優位*2の方が多い傾向にあります。

 

・状況に応じて臨機応変に対応することが苦手

まあ、簡単に言えば「気が利かない」ってことですね、はい。

自閉症の人は「パターン化したこと」に安心感を覚えます。

私の場合だと、「レストランでいつも同じメニューを頼む」などがこれに当たります。

逆に、イレギュラーなことには弱いです。

状況を「察する」ことが苦手で、「こういう時はこうする」というパターンに当てはまらないことだとどうしたらいいかわからなくなります。

 

・あいまいな指示や言葉を理解することが苦手

要するに、「テキトー」がわからない、できないということです。なぜなら、「テキトー」には「基準がない」からです。

例えば、幼稚園や保育園で、子どもたちの工作の材料として紐を準備しないといけない、という状況があったとします。

その時に、「長さはどれくらいがいいでしょうか?」と尋ねて、「あ~、テキトーでいいよ~!」と言われたとします。

このような指示の出し方は、「結局どれくらいの長さにしたらいいんだ!?」となってしまい、とても困ります。

ですのでこういう時は、「〇㎝ずつに切ってください」「これ(基準)と同じ長さにしてください」と言うように、具体的に数字を使ったり、基準を作ったりしてもらえると分かりやすいです。

あと、「少なくなったら補充してください!」なども困ります。

「少なくなったらって結局どれくらい!?」となります。

このような場合は、目安として実物を見せ、「これ(基準)よりも少なくなっていたら補充してください」などと言ってもらう方が分かりやすいです。

 

・何かに集中するとそれ以外なにも入ってこない

これは「過集中」と言われる現象です。私も何か夢中で作業していると、時間がたつのも忘れてしまい、夜中の2時とか3時とかになっていることもざらです。

パソコンに、指定した時間になると自動的にこれまでの作業を保存して、電源が落ちる、または操作が制限されるなどのリマインダー機能が欲しいです。

 

・何かしらの感覚過敏を持っていることが多い

自閉症に聴覚過敏や触覚過敏が伴うのは結構有名な話だと思いますが、「感覚過敏」は五感のどれにでも起こり得ます。

逆に、五感のどれかが鈍感な「感覚鈍麻」が伴うこともあります。

私の場合は特に主治医から診断が出た、と言うわけではありませんが、自分では「味覚過敏」だと思っています。

大人になっても味が濃い物は苦手、辛い物や酸っぱい物も苦手、炭酸も飲めません。

さいころから今に至るまで白いご飯大好きです。

 

とまあ長いこと書き連ねてきましたが、当事者目線で、私が知ってほしいことは大体書いたつもりです。特性に関しては同じ自閉症でも1人1人違うため、あくまで私の場合は、でお話してきましたが、少しでも自閉症の事を知ってもらえたら嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。お疲れ様でした。

書く方も疲れました。

*1:2歳でひらがなを読んだそうです。これは『ハイパーレクシア』と呼ばれ、自閉症の人にたまにいるそうですがここでは割愛します。

*2:耳で聞くよりも、目で見る方が分かりやすい